小林賢二のしごと

土と石と水と草木でアースワーク

好日の庭
2013年06月17日

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元祖好日荘でのアトリエ生活、十二年程で幕を閉じる。なにはともあれ引っ越す必要が生じた。2010年6月のこと。
そもそもアパートの駐車場に勝手に作っていた好日の庭、残してもいいけれど、植栽密度が高すぎて私のような数寄人がいないと維持できるような代物ではない。抜かれ、切られ、車に踏まれていくのも偲びないので、大木となってしまったセンダンと数本の中木を除いて、私が持ち込んだ植物たちも新しいアトリエに一緒に引っ越すことにした。自分の肉体の一部のようになりつつある小さな庭を解体するのに、たらたらの未練はあったけれど、どんなに小さくても、剥き出しの土の大地さえあれば、いくらでも新しい庭の世界を作りだす自信は充分に芽生えている。
引越先は、同じ不動産屋さんが管理する似たような木造二階建てアパート。変ったのは、二軒の壁をぶち抜いてつなげるリフォームをした事と、私の庭作りと手入れの手腕を評価してくれる不動産屋の社長さんと新しい大家さんが、アパートの駐車場の奥、南にある空き地の管理を私に任せてくれた事。
数本のサルスベリとカキと、私よりも年をとっていそうなシダレモミジとドウダンツツジとサザンカやツバキ。それらが無造作に剪定された殺伐とした初春の風景。かたちよく戻すのに年月がかかりそう。とはいえ、日照条件風通しも良好で、日陰だった好日荘の駐車場とは全く違う植物の風景が浮かんでくる。想えば、憧れの日向の庭ではあった。大家さんの了解を得て、何本かの中高木を間引く事から庭作りをはじめる。庭の復活にあたりちょっと悩んだ新しい庭のタイトル…小林賢二アトリエの庭はどこに越しても「好日の庭」ということで落着。
植物の収集観察に明け暮れた「元祖好日の庭」から、やけに陽当たりのいい「新好日の庭」に植物たちと一緒に移り、飽和状態ではじまった庭に新種を増やす必要もなく、ようやく庭で過す時間をただひたすら楽しむ余裕が生まれた。庭でネタを見つけて考案しているアートワークも少なくはない。
小さな庭のあるアトリエで、植物観察しながらの制作の日々が、かなり板についてきたところ。
(2013年3月、記)
   
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東京都国立市
KOBAYASHI KENJI ATELIER | 庭のデザイン・庭作り ・・・進行中
2010.07〜

Power of Birth
2013年06月17日

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日本一の富士山の麓、自然豊かな御殿場の大地に新しく生まれる交流センター。
日本一の景観を眺める大らかな芝生の広がりの中に、小さな子供から老人までの多くの市民に親しまれ、自然にみんなが集い交流の契機を生みだせるような、ここから何かが生まれ出るような、やさしい光に包まれた造形空間を創出します。
空に向かって伸びやかに成長する木々、光の中にゆらめく枝葉、風に舞う清楚な白い花びら、たおやかに流れる雲・・・背景にそびえる雄大な山と緑豊かな自然の情景を思い浮かべながら生みだされた造形です。
四季折々、日々刻々と変容するまばゆい陽光を映し、やわらかく変化ある様々な表情を見せるシンボル彫刻。そこから生みだされたかのような様子で、大地にかろやかに浮かぶ白い雲、花たちが集い、たのしそうに戯れます。白く輝く光のうまれる詩的な風景が、御殿場で暮らす人々に心地よい集いと憩いの場を与え、清々しい気持ちで豊かな時間を過ごす事のできる空間をつくります。
この作品は、ここでたくさんの人々とのふれあいを待っています。
   
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静岡県御殿場市
御殿場市民交流センター | 環境彫刻
白御影石、 土、 富士芝
2008

photo_Forward Stroke Inc.

元祖好日の庭
2013年06月17日

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春を待つ石
   
   
13年間仕事場として借りていた「好日荘」。古アパート故のゆとりのある配棟計画のおかげで駐車場としてのオープンスペースが広くあり、常時駐車場の借り手がいないため、これをよいことに隅の方から遠慮気味に植物を増やしてきた。エントランスサイドとなる北側は、二階建ての当アパートと西側にやはり二階建ての住宅があり、日照条件は非常に良くない。しかし、都市の住宅の庭はその大半が日照的には悪条件であり、そこでここを日陰の植物の実験ガーデンとして利用させて頂いていたのが、「好日の庭」。
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好日の庭のはじまりは、設計室玄関前に控えめに植えたビンカミノールと、駐車場の一番奥のコーナーに植えたヤマブキだった。
アパートの駐車場には厚く砕石が敷かれていたが、隅の方には良質の土も残り、ナンテンやフヨウやアジサイが元々あった。どんな草花や野草がでてくるか一年間ほど様子を窺い、前述のスイセンと、ドクダミ、ヤブカンゾウと数十種類の雑草たちを確認し、翌年からわたしの触手とビンカミノールの触手が砕石の地面に浸食をはじめる。途中、足を折ったヤンキーの車が数ヶ月置きっ放しになり貴重な陽当りを削られたり、工事現場の車が一挙に5台も留まり続けたり、幾多の試練を乗り越えてきたが、アパートを監理する不動産屋の社長の興味を得、隣に越してきた塗装職人F氏という強い見方も得、近所の植物好きのご婦人たちの大声援?を浴びながら、仕事そっちのけの庭いじりが続いてきた。
駐車場が全部緑地になったら地球はどれだけ救われることか。
この庭での出来事と、庭から見える風景という自主規制を敷いて、写真と随想を載せて三年経つ。冬になるたびに深刻なネタ不足に襲われ止めようかとも思ったが、必ず春はやってくる。まだまだ続けるぞ。実生や挿し木から育っている植物たちの成長はゆっくりとだが、腰を屈めれば小さな風景がたくさんある。葉っぱをめくれば思わぬ出来事にも出会える。出会いや発見がたくさんある。とても楽しい。五感がどうのこうのなんてはなしは、土と水とたくさんの慎重に選ばれた植物たちとすこしの気の利いた石があればそれでいいのだ。あとは鳥や虫や風や太陽がなんとかしてくれる。 だからわたしは庭をつくりたい。
(2006.04.13、記)
   
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手のひらの水鉢
   
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太陽 

photo_Yasuyuki Tokunaga

   
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一の石(ハジメノイシ)
   
東京都国立市
KOBAYASHI KENJI ATELIER 旧オフィス | 庭のデザイン・庭作り ・・・というか庭いじり
1997.03〜2010.06

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