小林賢二のしごと

元祖好日の庭
2013年06月17日

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春を待つ石
   
   
13年間仕事場として借りていた「好日荘」。古アパート故のゆとりのある配棟計画のおかげで駐車場としてのオープンスペースが広くあり、常時駐車場の借り手がいないため、これをよいことに隅の方から遠慮気味に植物を増やしてきた。エントランスサイドとなる北側は、二階建ての当アパートと西側にやはり二階建ての住宅があり、日照条件は非常に良くない。しかし、都市の住宅の庭はその大半が日照的には悪条件であり、そこでここを日陰の植物の実験ガーデンとして利用させて頂いていたのが、「好日の庭」。
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好日の庭のはじまりは、設計室玄関前に控えめに植えたビンカミノールと、駐車場の一番奥のコーナーに植えたヤマブキだった。
アパートの駐車場には厚く砕石が敷かれていたが、隅の方には良質の土も残り、ナンテンやフヨウやアジサイが元々あった。どんな草花や野草がでてくるか一年間ほど様子を窺い、前述のスイセンと、ドクダミ、ヤブカンゾウと数十種類の雑草たちを確認し、翌年からわたしの触手とビンカミノールの触手が砕石の地面に浸食をはじめる。途中、足を折ったヤンキーの車が数ヶ月置きっ放しになり貴重な陽当りを削られたり、工事現場の車が一挙に5台も留まり続けたり、幾多の試練を乗り越えてきたが、アパートを監理する不動産屋の社長の興味を得、隣に越してきた塗装職人F氏という強い見方も得、近所の植物好きのご婦人たちの大声援?を浴びながら、仕事そっちのけの庭いじりが続いてきた。
駐車場が全部緑地になったら地球はどれだけ救われることか。
この庭での出来事と、庭から見える風景という自主規制を敷いて、写真と随想を載せて三年経つ。冬になるたびに深刻なネタ不足に襲われ止めようかとも思ったが、必ず春はやってくる。まだまだ続けるぞ。実生や挿し木から育っている植物たちの成長はゆっくりとだが、腰を屈めれば小さな風景がたくさんある。葉っぱをめくれば思わぬ出来事にも出会える。出会いや発見がたくさんある。とても楽しい。五感がどうのこうのなんてはなしは、土と水とたくさんの慎重に選ばれた植物たちとすこしの気の利いた石があればそれでいいのだ。あとは鳥や虫や風や太陽がなんとかしてくれる。 だからわたしは庭をつくりたい。
(2006.04.13、記)
   
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手のひらの水鉢
   
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太陽 

photo_Yasuyuki Tokunaga

   
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一の石(ハジメノイシ)
   
東京都国立市
KOBAYASHI KENJI ATELIER 旧オフィス | 庭のデザイン・庭作り ・・・というか庭いじり
1997.03〜2010.06

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