kobayashi kenji atelier
     
ボケ

2006.03.30 ボケ

自宅の庭からヒコバエを引っこ抜いてきて一昨年に植えた。
まだ高さ60cmほどで、まわりに茂ったキクの中に隠れてしまい存在すら忘れかけていた。あわててまわりの枯れたキクを整理したのは1月の終わり頃だったか。冷たい仕打ちと暗い日陰暮しを耐え抜いて花を咲かせてくれている。
花の少ない時期のロンドンで見かけた、コーポラティブな小さな庭の路地にささやかに枝を広げ一片のやさしい光を放っていたあのボケ!が、「このボケ!」の評価を一変させる。きっかけはいつも予期せずやってくる。

華のない名前を授けられてしまい、いつもサクラのかげにかくれ、ヒコバエを捨てるのもなんなのでとりあえず植えておいた「このボケ!」でしかなかったが、サクラを植えるには大きな勇気がいる借家の庭で、高さ3mほどで頭打ちする「このボケ!」は、小さな好日の庭には格好の早春を彩ってくれる花木であった。
数年後には立派な株立ちに成長した「このボケ!」が今の季節の主役に躍り出るだろう。ユキヤナギの白が更に引き立つはずである。
頼むぜ「このボケ!」