小林賢二のしごと

Landscape art, Sculpture/D-project

D.project
2013年06月17日

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photo_Forward Stroke Inc.

   
舞台は代官山駅から徒歩三分、八幡通りと旧山手通りが交わる交番前の歩道橋に上ると、鎗ヶ崎交差点方面の真っ正面に株式会社モリモト本社ビルの大ガラス面が見える。ヒルサイドテラスを越えて駒沢通りに向かう信号待ちの車中も格好の客席。
四季の植物の風景、彩りの変化に乏しい界隈の中で、アイストッフ的な立地の建築外観を一枚の大きなキャンバスに見立て、この大きなキャンバスを活かした可変性のある作品によって、季節の風景をつくりだすというテーマのもと、コンセプトをまとめた。
大ガラス面の内側に、百六十五枚の楮和紙を吊している。各パーツを動かしたり、全部を並べ替えたり、新しい色を増やすことによってファサード全面にさまざまな表情を生みだすことができる。風景をつくるという目的からデザインのモチーフは、光や水や空気や緑がつくりだす自然の現象を主題にしながら、代官山という場所柄からクリスマス、バレンタインといった時期に華やかさを加えている。
建築と道路に支配された都市的な風景の中で、ふと目にする、手わざ、手作業で生みだされるアートワークが、水や緑とは異なる次元での癒しを道行く人々にも提供する。
いつでも、そこに行けば出会える風景。そして、変っていく風景。
「D.project – Daikanyama SHOW」は、その「安心感」と「ときめき」を自ずからつくりだす、仕掛けるという舞台でもある。
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このショーのスタートは、たまたま「好日の庭」を書き始めた時期と重なっている。庭での出来事を書きながら、大きなキャンバスに反映させたストーリーも少なくない。
他人目に触れない小さな庭と、大勢の人目に触れることを目的としている代官山の現場を行き来しながらアイデアを膨らましていた日々は、私にとって実に興味深い毎日だった。
月毎、季節毎に変えるデザイン画は、クライアントに提案する前に、いつも行く飲み屋で意見を募っていた。ジャズを聴かせるその店のフィルターを通り、テーマは次第に季節の音楽へと変っていく。植物たちの自然のリズムと、音楽のリズムと、代官山というまちのリズムを感じながら生みだされた、ひとつひとつのショーに思い出がある。「Daikanyama SHOW」は三年余り続いて幕を降ろしているが、この作品の種は、まだどこかで生きている。
   
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東京都渋谷区
代官山モリモト本社ビル | ファサードアートデザイン・改変作業
色染め楮和紙
2002 スタート

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